卒業論文でパチンコ業界の事を扱う予定です-回答

今回は、ちょっと珍しい性質のご質問に回答させて頂きます。

 

S.H. さんからのご質問

S.H. さんは、「現代社会における娯楽、余暇産業の位置付け」的なテーマで卒業論文を作成中で、パチンコ業に関わる資料が不足していて、今回お問い合わせ頂いた、という経緯です。

 

それでは、遣り取りの内容をご覧下さい。

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(導入部略:個人情報などの記載があります)

 

この3店舗に対して取材しましたが(本社にも連絡しました)、十分な回答がなく困っています。

 

他には、大学図書館、市の図書館にも行きましたがどこにも知りたい事が書いてあるものがなく、ネット上でも正式なものと言いますか参考にできる資料に乏しい状況です。

 

特に、統廃合が進む過程で持ち株会社化、M&Aなどが発生すると思うのですが、例えば規模が大きくなったパチンコホール経営会社が上場を考えた時にかなりの障害があり業界内では上場は主流ではないと知りましたが、この背景についてお答え願いたいです。

 

また、業界では、パチンコホール経営会社の上場については、どのような認識を持っているのかについてもお答え願いたいです。

 

お忙しいところ申し訳ありませんが、お返事お待ちしております。

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ここまでが、お問い合わせフォームからのメールでのご質問内容(抜粋)です。

 

以下、楽太郎からの返信内容です。

 

返信①

S.H. さん

 

お問い合わせフォームからのメールでのお問い合わせ、ありがとうございます。

 

早速ですが、回答です。

 

まず、地元のホール企業に色々とお問い合わせされたようですが、今回のような個人の取材に対してしっかりとした対応をしてくれるのは、適当な規模があり本社機能がしっかりしているところに限られると思います。

 

十分な回答が得られなかった理由としては、そもそも対応する気がなかったり、役職者が不見識であったり、資料自体が無かったりと理由は様々でしょうが、もしも今後継続して調査されるのであれば、先にあたって頂いた3社よりも会社としてしっかりしている●●(近県にある店舗名/法人名)か●●(同上)、或いは●●(同上)が良いと思います。

 

まずは、HPのお問い合わせフォームを利用して取材申し入れをした上で、面会してもらうなりすれば、会社側としても仮に資料室的な部署があればそこから提供可能な資料をくれるでしょうし、まあそれ相応の対応は期待しても良いかと思います。

 

さて、私に対してのご質問ですが、

 

  • パチンコホール企業の上場の障害について
  • 業界内では、ホール企業の上場について、どのような考えを持っているのか

 

この2点にお応えすれば良いでしょうか。

 

前者の方であれば、すぐに回答が可能ですが、後者についてはたしか警察庁(業界の監督官庁です)がホール企業の上場についての見解を述べた時の資料が社にあったかと思うので、数日お待ち頂ければと思います。

 

改めて、こちらから連絡差し上げます。

 

返信②

S.H. さん

 

先日お問い合わせ頂いた件、資料が出て来ましたので、それも引用しながら、早速回答させて頂きます。

 

以下、回答

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まず、ホール企業の上場の障害について説明します。

 

これは簡潔に言えば、上場にあたっては利益発生の仕組み、収益構造(利益コントロール手段)などが審査されると認識していますが、パチンコ業に関してはそのどちらも不透明/不安定なものの上に立脚しているからと言えるかと思います。

 

利益発生の仕組みについては、ホール内での遊技の結果得られた「ご褒美」としての景品が、第三者である買取所を介して現金化されるという仕組みが、世の中的にグレーとされています。

 

これに関しては、過去記事で詳しく解説しておりますので、そちらもご覧頂くとご理解が深まるかと思います。

 

【参考】2017年1月20日公開

『取り締まり行政側(政府)が認めている3店方式が、100%成り立っている状態の定義とは?-回答』

 

この実質的な換金システム、3店方式が厳格に機能している事が、パチンコ業の許認可上の「合法性」を担保する必要条件と言えます。

 

その厳格に機能している事の要件として、参考記事にも書きましたが

 

「景品問屋(卸売業者)、営業者(ホール)、買取業者(換金所)の3者が、人的/経営資本的に独立している」

 

この事が挙げられる、という訳です。

 

ただ、では実際に全国の景品問屋、ホール、買取業者が本当にそのようになっているかと言えば、調査自体が難しいというのが現状であり、そういった意味において業界全体として透明性が十分に認められていないのが現状と言えます。

 

なので、過去にピーアークという会社がジャスダックへの上場を試みた際には(2005年~2006年)、敢え無く却下されたという事例もあります。

 

では、ホール企業の国内証券市場への上場の事例が全く無いのかと言えば、上場している会社がホールを経営している(いた)という事例であれば、クレディセゾンやダイエーなどがありますので、それに関してはご興味があれば個別にお調べ頂ければと思います。

 

また、現在進行形であれば、王蔵というホール企業が上場を試みている最中との事ですので、その動きを追って頂くのも良いかと思います。

 

そして、これは国外の証券市場についてなので実態調査自体が困難かと思いますが、ダイナムという会社が香港で上場していますので、これもご興味があれば個別にお調べ頂ければと思います。

 

次に、ホール企業の利益コントロールについて、簡単にですが説明します。

 

一般的な業種であれば、何かを仕入れてそれを売って、といった具合にお金の動きは分かりやすいですが、この業界の利益構造に関しては、一筋縄ではいかない理由があります。

 

それは、パチンコ遊技機における、釘調整の存在です。

 

遊技機には主にパチンコ(法規上は「ぱちんこ」)とスロット(同「回胴式遊技機」)があり、スロットの利益コントロールについては「段階設定」という正規に認可された機能を使用して、それが可能であり、透明性/合法性があります。

 

しかし、パチンコの利益コントロールについては、その手段は釘調整であり、法規上「遊技盤面に対して概ね垂直」に打ち込まれている釘を日々動かして、主に当たりを追い駆けるまでに使う金額を上下させる事で、それを実現させています。

 

要は、本来は「型式試験」という厳正な試験に合格した状態のまま営業の用に供するべきものを、「概ね垂直」という曖昧な定義を都合良く解釈する事で利益コントロールしているという、大っぴらにはできない不透明さ/違法性があるという事です。

 

これに関しては、最近非常に性急に状況が動いていますので、今後「管理遊技機」という新たな仕組みによって状況が変わる可能性がありますが、おそらくS.H. さんが卒論に取り組んでいる間は動きが無いと思いますので、現状では参考程度に留めて頂いて良いです。

 

まあ、一言で言えば、業として収益を得る、利益コントロールする、この両面において、ホール企業は不安定なものの上に立脚しているので、上場を試みた時には、それがネックになる、このように把握して頂ければと思います。

 

 

それでは次に、業界内ではホール企業が上場するという事に対して、どのように考えているのか、これについて説明します。

 

ホール企業同士が、お互いにどう思っているのかについては、これはそれぞれ考え方がバラバラでしょうから省かせて頂くとして、業界の監督官庁である警察庁が、ホール企業の上場について触れた行政講話がありますので、私の方からはその内容を紹介させて頂く事にします。

 

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平成14年(2002年)6月6日

 

社団法人日本遊技関連事業協会 総会

 

警察庁生活環境課長 勝浦敏行 氏による行政講話

『ぱちんこ行政の今後と業界健全化の方向性』

 

以下、講話内容要旨

 

「株式公開については、証券業を所管していない警察庁が直接その是非について判断できる立場にない」

 

「株式を公開すべきかどうかは、証券取引所等による株式上場の基準に基づく審査によって判断されるべきものである」

 

株式が公開される事により、健全な企業としての一定の社会的評価を受け、これがひいてはパチンコ営業の業務の適正化を推進し、営業の健全化に資するものと考えられる」

 

「一部には、警察の対応が株式公開の足かせとなっているとの懸念がある。しかしながら、風営法で禁止されているのは、営業者が客に現金を提供することや客に提供した景品を直接買い取ることなどであり、こうした行為あるいはこうした行為と同視し得るような行為については、当然警察としても取り締まりの対象として捉えていくことになる」

 

「これ(現金の提供や景品の直接買い取り行為など)は、あくまでも個々の企業ごとの問題であり、例えば一営業者がこのような違反を犯したからといって、業界全体がグレーと見られるものでは決してないものであると考えている」

 

※参考資料:『遊技ジャーナル』平成14年(2002年)6月号

________

つまり、取り締まり行政側としては、3店方式がしっかり機能してさえいれば、ホール企業の上場は業界が社会的評価を受けて、健全化が推進されるきっかけになり得る、このように考えている(いた)事がお分かり頂けるかと思います。

 

では、現時点ではどのように考えているのかと言えば、これは最近の行政講話では話題になっていないと把握していますので、私の方では分かりかねます。

 

 

 

以上、

 

  • パチンコホール企業の上場の障害について
  • 業界内では、ホール企業の上場について、どのような考えを持っているのか

 

この2点について、資料も交えながら、回答させて頂きました。

 

十分な回答になったかは分かりませんし、卒論作成のお役に立てるかどうかは分かりませんが、また何かありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせ下さい。

 

________

 

ここまでが、遣り取りの内容の抜粋です。

 

 

今回は、これくらいにしておこうかと思います。

コメント頂ける方は、下の方からお願い致します。

 

 

 

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コメント
  1. なるほど。
    こういうのは業界誌を個人で購読するとかしないと、たしかに調べにくいでしょうね。

    • くらま さん

      業界誌の中でも、『遊技通信』などの硬派なものを選ぶ必要があるので、業界外の若者が参考にするのは色々と面倒な事が多いかと思います。

  2. 卒論でパチンコ業界について取り上げるくらいなので、就職先は勿論パチンコ業界ですかね?

    そういえば丁度いいタイミングで、日経ビジネスでダイナムグループの香港上場について社長インタビューの記事がアップされていましたよ(TwitterのフォロワーさんからのRTで知りました)。

    • よく読んだら2012年のバックナンバーでした( ̄▽ ̄;)
      それでも興味深い記事なのは確かだったので、質問者さんも是非目を通してみてはどうかと_(._.)_

  3. 本日も勉強させて頂いております。

    確かに上場企業ダイエーの子会社が経営していた…パンドラ?という屋号のパチンコ店があったように私も記憶しております。

    主たる業務としてパチンコ店の経営があるとみなされたらアウトなんでしょうかね。
    ピーアーク、いけるか!?みたいな当時の状況、懐かしい。

    更に懐かしいのは、私は大学で法律を学んでいたのですが、私もパチンコ店を題材としたものを行政法ゼミで研究発表した事を思い出しました。

    ただ何を研究したかはさっぱり思い出せません。
    老化でしょうか。
    それとも中国語の数字の読み方と点棒の数え方ばかりを覚えていたせいでしょうか…。

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