Once Upon a Time in Ameyoko-ある夏の記憶【中編】

中編は、一般的に、主任やリーダー等と呼ばれるような下っ端役職者だった頃のお話から始まります。

 

前編をまだ読んでいない方は、こちらの方から初めにどうぞ

【前編】2016年9月23日公開

『Once Upon a Time in Ameyoko-ある夏の記憶【前編】』

 

社畜をやり切る

当時、お店の本棚にあった業界誌に、このような事が書いてありました。

 

「弊社では、福利厚生面には自信があります」

「どの役職者でも月6休は必ずとれますし、早出残業もほとんどありません」

「業務効率化を重視していて、時間内に全ての業務が完結するように指導しています」

 

どうやら、当時の私の勤務店の近くにも展開しているホール企業の、どこかの店長さんへの取材記事のようです。

 

今では当たり前の考え方でしょうし、私自身もいち店舗の店長以上の権限を持つようになってからは、労務関連には細心の注意を払って不当な勤務環境にならないように留意しています。

 

しかし、当時の私は、全く違う考え方というか、自分なりの信念でもって行動していました。

 

「何が定時で業務完結だ、あのチェーン店舗はトイレは臭いわ汚いわ、遊技台のガラスはヤニ汚れで茶ばんでいるし酷いときは前日の客の唾や痰が翌日もベッタリ残っているじゃないか」

 

「どんな役職者でも月6休で残業しない?あんなク●汚いゲージでよくそんな悠長な事を言っていられるな!もうちょっと釘調整の技術を上げるとか、努力した方がいいんじゃないのか」

 

「少しでも他店より集客できるように、仕事はただやるんじゃなくて、やり切るべきだ

 

若手の社員で、たまに居る、妙に熱い奴だったという訳です。

 

こういう奴は、大体は周囲からは煙たがられたり、特に女性社員と衝突したりします。

 

しかし、ラッキーだったのは、私の周りには特に邪魔をしようとか、いじめようとか、そういう負の感情を向ける人がおらず、少なくともこんな私を放っておいてくれました。

 

もちろん、ただ単に私が人の悪意に気付かないような鈍感なタイプの人間だったからかも知れませんが。

 

丸1年くらいでしょうか、自分なりに相当詰め込んで勤務し、役に立つ/立たないは別にしてあらゆる類の提案をし、自分なりにデータをとったりしながら頼まれても指示されてもいない企画書をビシバシ提出したりして過ごしました。

 

そんな私に、更にラッキーな事が起こります。

 

上級管理職に昇格

よくマネジャーとか呼ばれるような役職者をイメージして頂ければ誤解はないかと思います。

 

社内人事で異動があり、私があまり上手く付き合えなかった店長さんが、他店舗へと移る事になりました。

 

そして、サブ的な立場だったマネジャー(いわゆる副店長)が店長に昇格して店を管理する事になった訳ですが、この方は自分が持ち上がって空いたマネジャーポジションに、私を推薦してくれたのです。

 

他にも、3名だったでしょうか、先輩社員がおり、一番若く、社歴も短く、下っ端だった私としては正直かなり驚きましたが、せっかく推挙して頂いたからにはこの店長の判断が間違っていなかった事を証明する意味合いでも、より一層張り切って勤務するようになりました。

 

当然、マネジャーともなれば更に業務は増え、なんと言っても計数知識や店舗管理のノウハウをしっかりと身に付けない事には役職が務まりません。

 

店長が不在のときは、自分がその時間帯(いわゆる早番とか遅番とかです)の責任者として店の留守番というか、お店の営業を成り立たせなければならない訳ですから、相当な緊張感がありました。

 

そのような責務と引き換えに、業務上の権限も増え、これまで使えなかった鍵が使えたり、ホールコンピューターのセキュリティーレベルが上がって閲覧できるデータ量も増えたりと、色んな場面で自由度も増しました。

 

その中で、私が一番嬉しかった事は・・・思う存分、早出/残業が出来るという事でした。

 

そんな私に、またもや幸運が訪れる事になります。

 

君、釘、叩いてみるか?

前編で軽く触れた通り、当時は釘調整/設定管理を専門で行う「先生」と呼ばれている方がお店に出入りしていて、閉店後か開店前に店長と一緒に釘を叩いたりしていました。

 

その中で、店長から「じゃ、明日の設定はこれで!朝一の”奇数?”、”偶数?”、”据え置きチャンス?”札はここな」、「”爆裂予想台”とか”成り上がり”札とか、賑やかし系の札はお前が考えて挿していいぞ」といった具合に、スロットコーナーの設定変更やリールずらし、札挿しなども任せてもらえるようになり、ようやく一端のパチ屋の管理職っぽくなって来て毎日勤務するのが楽しくなっていきました。

 

ただし、他の皆と同じように、この先生だけはどうも苦手というか、いわゆる昔かたぎの職業釘師が醸し出すオーラというか怖い感じの雰囲気に気圧されて、なかなか接点を持てずにいました。

 

ですが、そうはいっても釘調整は一番憧れの業務というかポジションです。

 

設定変更や札挿し業務などをなるべく早く終えて、清掃やバックヤードの整頓などをしながら(時には、する振りをしながら)、先生と店長が釘を叩いている所をこっそり盗み見していました。

 

そんなある日、京楽島でカセット(上皿から発射台に玉送りする、汚れやすい部品)の分解清掃をしている時だったでしょうか、たぶん初めて、雑談的に先生から声を掛けられます。

 

「君、新しいマネジャーなんだって?」

 

「ハイ!楽太郎と言います」

 

「そりゃそうだろ、名札に、そう書いてある

 

なぜかはわかりませんが、この遣り取りが、いまでも忘れられません。

 

そして、

 

「君、釘、叩いてみるか?」

 

予期していなかった問いですが、これまでの癖というか、良く考えもせずにほぼ反射的に即答しました。

 

「ハイ!」

 

当時は、いくらマネジャーとはいっても、店長が先生に強く推薦したり、先生自身から声を掛けてもらって店長に「あいつにやらせてみよう」的な流れでないと、釘調整業務にはあたらせてもらえませんでした。

 

同格である、他の先輩マネジャーに釘を叩ける人はおらず、一番下っ端だった私に、なぜかチャンスが訪れたという訳です。

 

後々、「先輩ではなく、なんでまた私にハンマーを持たせてくれたんですか?」と先生に聞いてみたら、「目つきを見れば、そいつがどれだけやるか分かる。君も、俺くらいの歳になったら、大体は分かるようになるよ」とだけ言われました。

 

ホール用品の販売会社のカタログを見ながら、ハンマー等の釘調整用具を選びます。

 

「ヘッドの材質は、形は、先生のと同じやつにしよう」

 

「柄の部分は、これも先生のと同じ材質、形にしよう」

 

「柄の色は、これも先生のと同じようなやつ」

 

「ゲージ棒や板ゲージは、これも先生が使っているのと同じタイプのものを買おう」

 

・・・結局、先生が使っている年季が入ったハンマーと似たような形状、材質のもの、用具一式も大体は似たようなものになりました。

 

これは、今でも同じものを使用しています。

 

毎日居残りで釘調整、楽しいな

深夜2時、パチンコフロアーには先生と私が(時には店長も)一緒に釘を叩く音が響きます。

 

腕が良い専業者に張り付かれて粗利マイナスになっている台をチェックして、その専業者を引き剥がしつつ稼動はあまり落ちないような調整ポイントはどこか?

 

当時は新台はお祭り調整で開店し、4~5日かけて徐々に数値を落としていくプランで調整していたので、2日目はどの程度の水準に合わせるか?

 

バラエティーに極端に稼動が悪い台がある。

なんとか調整で生き返らせられないものか?

 

色々と思案しながらハンマーを振るい、時には

 

「楽太郎、この前叩いた台、ワープが甘いな。あそこはゼロヨン(ゲージ棒11.04サイズ)にしといた方がいいぞ、ゼロハチ(11.08)じゃ、かなり通るからな」

 

「寄りのバラ釘は、もっと上げ釘にしとけ、お前の調整じゃ玉が暴れてスランプが出やすくなる」

 

隣の島から、先生が大声でアドバイスをくれます。

 

いつだったか、「楽太郎、お前、家どこ?」と聞かれ「●駅の近所です」と答えたら、「ああ、俺んちと方向は同じだな」という事で、その後は遅番でご一緒した時には必ず車で自宅最寄りの駅前まで送ってくれるようになり、時にはそこで夜食もご馳走になりました。

 

・・・これも、後々知ることになる訳ですが、実は先生のご自宅は、全くの反対方向でした。

 

そんなこんなで、張り切って働く毎日。

 

ある程度、マネジャー業務にも釘調整業務にも慣れてきて、どんどん仕事が楽しくなっていきます。

 

そんなある日、とある有力機種の新台入替の深夜、ちょっとした事が起こります。

 

~後編に続きます

 

 

「後編も読んでやるか!」という方は、そっと押して頂けると嬉しいです。
にほんブログ村 パチンコブログ パチンコ店・店員へ

にほんブログ村

コメント
  1. 楽太郎さんは運が良かったと言いますが、それまでの日頃の行いがこの結果に結びついているわけですから、自ら呼び込んだ幸運・・むしろ必然だったんだと思います_(._.)_
    お師匠さんとの話は、人が他人に何かをしてあげるという事は理屈じゃないというか、出会いって大切だなと感じました。
    後編も楽しみにしています♪

    • テツ さん

      謙遜する訳では無いですし、やればやるだけ見の丈が分かってくるので、やはり運が良いと言えるかと思います。
      後編でも、アメ横で、私のキャリアにとって一つの大きな転機となる幸運の電話が鳴りますので、お楽しみに。

コメントを残す