凄く長いレシート形状のスロットデータ表(業界的には「ジャーナル」と呼びます)と設定キーの鍵束を手に、店長の手先であるSさんは今日も神秘的な体臭を漂わせて活動中・・・
これは私が大学生の頃だったか中退した後だったか、アルバイト先のパチンコスロット店での事ですので、今からもう18年くらい前の話になります。
Sさん、こんな人
一応、ちゃんとした役職名はあるのですが、お店が特定されないように伏せておきます。
一般的には、主任やリーダーなどと呼ばれることが多い、一般社員にちょっと毛が生えたような感じの役職者をイメージして頂くと良いです。
まあ、役職者とは言っても、我々アルバイトから見れば単なる”店長の手先”であり、いつも怒鳴られているような印象しかない40代前半くらいのオッサンでした。
仕事内容や人物的には
・休憩回しのフォローでホールに出てくるが、全く役に立たない
→常連客からもダメ人間扱いされている
・店長から怒鳴られて、目に涙を浮かべる
→いい歳をしたオッサンが泣いているのを目にして、アルバイト連中はテンションが下がる
・店長から詰められると、反射的に嘘をつく
→すぐバレる。そして、すぐ謝るも怒鳴られ、泣く
・ある日、「奇数or偶数」という奇妙な札を作る
→1日だけだが営業で使用し、店長から怒鳴られたらしい(私はその日は休みだったので、同僚から聞いた話です)
※その後「奇数?」「偶数?」という札に変わっていたので、本来店長が意図していたのはこの札だった模様。
・似合わないカッコいいバイクに乗っている
→たしか、YAMAHAのSRをカスタムしたもの。ただし、通勤には絶対に使用しない(いたずらされるから、との理由でした)。
・ハッピが臭い
→「出玉注意報発令!」といった、ちょっと恥ずかしいデザインの年季が入ったハッピは、呪いのような臭いがします
※ハッピを脱いで、制服姿でも臭いです。更に、制服を脱いでTシャツ姿でも臭いです。上半身裸でも臭くて、その胸毛は、わかって頂けるかどうか微妙な例えですが、初期のキン肉マンの悪魔将軍編に出て来る”魔王サタンのオーラ”にそっくりな形状をしています。

こんな感じ(ご覧の通り、私に絵心は皆無です)
・朝礼での唱和が覚えられない
→社員は、「私たちは、ひとつ、お客様をお待たせすることなく、ふたつ~」といった唱和的なものの音頭をとるが、Sさんはその後半部分があやふやでよく間違える
※今になって思えば、覚えられないというよりは、人前で緊張してパフォーマンスが落ちるタイプのようです
・店長の気配を察知することに関しては超一流
→「そろそろいらっしゃるぞ!」、「今、音がした」、「インカム、一瞬ザザッて聞こえなかったか?」、「電話が鳴りそうな気が・・・ほら!鳴った!」・・・といった具合に、サバンナで生きる草食動物のように不思議な感知力を持っている
※不思議に、その予感は大体は当たっていたような記憶があります。
・お店の、通し勤務最長記録保持者である(らしい)
→1週間以上帰宅せず、店で寝泊まりして早番&遅番勤務したらしい
・煽りマイクパフォーマンスでは饒舌
→「土曜の朝一BONUSはこのお方、サンダーVからお見事GETだ・・・残念、レギュラーか!しかしこれで大爆発の導火線に火が点いた!ホップステップど~んとジャンプ!安いがまずいホップス生、ど~んと出したら今夜はシャンパンで乾杯だ!今日のサンダーはいけるぞ!じゃんじゃんバリバリ張り切ってどうぞ!」
・・・こんな感じの、今となっては時代を感じる激しいマイクには定評あり
※昔のパチンコ屋あるあるなのですが、早口でまくし立てるマイクパフォーマンスには、その中に卑猥な文言を挟み込んだり、かなりふざけた事を言うスタッフが必ず居ました。
これもセンスの良し悪しで、Sさんはどちらかというと真面目に煽るタイプで、ちょっと古臭いというか、聞いていて恥ずかしくなるというか、カッコ悪い感じでした。
※ホップス生
→20~30代の読者の方は、ご存じ無いでしょうか?1990年代に販売されていた発泡酒です。たしかSMAPの中居君がCMをやっていました。
・一応、店長から設定変更を任されている
→指示通りに打ち変えて、決まった札を挿して、といった業務を行っていた模様。
※毎日ではないがモーニングの仕込み日があり、その時は遅番勤務して閉店後に他のもう一人の社員と一緒に作業をしていたようです。
ざっと、こんな感じの人でした。
楽太郎的には、嫌いではないが好きではない、いつでも臭い人、まあこんな印象でしたね。
アルバイトでしたので、そこまで絡みは無かったといった方が良いでしょうか。
「出来上がってるか?」
私は基本的には遅番勤務だったので、あまり早番で出たことは無いのですが、それだけに稀に早番勤務した時のことは今でも割と良く覚えています。
昨晩もお店で寝泊まりしたのでしょうか?
異臭がするSさんと、店長が、スロットコーナー内で何やら話しています。
店長「出来上がってるか?」
Sさん「トラッドは、指定の台は全部BIGが立ってます」
店長「よし、他は?」
Sさん「手回しして、リーチ目ズラしてあります」
店長「(フラグが立っているのは)BIGだろうな?」
Sさん「大丈夫です、BIGです」
店長「よし、BOXは?」
Sさん「戻してあります」
店長「よし」
・・・店長がBOXと呼んでいたのは自動打ち込み機の事で、ファミコンソフトの箱くらいのサイズの装置に3~4本のハーネス、そしてスイッチ的なものが2つくらい付いているものでした。
遅番勤務時の新台入替作業の補助で残業した時など、たまにスロットコーナーを覗くと店長やSさんが何やら作業をしており、無人状態でリールが回っている台がチラホラ。
後年、今のホール企業に勤めて釘調整/設定の師匠(すでに引退)にこのことを話すと、「だいぶショボいの使ってたんだね。たぶん主基板/電源BOX/リール/ホッパーに接続するタイプじゃないかな。仕上がるまで遅いらしいよな。ホッパーに繋ぐのは、払い出し止めるためだと思うよ。スイッチはREGが立った時に消化するかどうかの切り替えと、あとは動作開始ボタンだと思う」との事でした。
こういった自動打ち込み機に関しては、私よりも5~10歳くらい上か、同年代であっても20歳かそこらの年齢で店長格までスピード出世したような方でなければ、機器を裏業者に発注したり実際に自分で仕込んで営業に使っていたという人は居ないと思います。
※これにもエリア差があるらしいです。
関東近県では、私がアルバイト勤務していた時期が、おそらくはこういった朝一BIGを仕込むモーニング時代の最終期ではないでしょうか。
なので、詳しい機能に関しては、残念ながら私には分かりません。
Sさん、やらかす
兎にも角にも、人力&打ちこみ機でもって店長の指示通りに設定変更やモーニングの仕込み業務を行っていたSさんですが、ある日、致命的なミスを犯す事になります。
それは・・・
設定変更の指示表(ジャーナルに「①」=設定1、「②」=設定2、「M1」=モーニングBIGで設定1などと記載していたらしい)をホールに置き忘れて常連客から拾われるという不始末です。
その日、いつも通りに遅番出勤してきた私は、業務開始前の朝礼(夕方だが、慣例上そう呼んでいました)で、若い常連客数名が出入り禁止になったという伝達があったと記憶しています。
噂話が広まるのは早いもので、要は
・Sさんは前日閉店後から設定変更業務にあたり、その後手回ししたり仕込み機を使ってモーニング台を用意し、店で寝て、早朝に早番の社員が出勤してくる頃に退勤。
→設定変更の指示表をメダル箱の中だったか遊技台の下皿だったかに置き忘れてしまい、早番社員も気付かずにそのまま開店、そこに着席した常連客に拾われた
・その常連客は仲間内で情報をシェアして、数名が良設定台を確保
→異変に気付いた早番の時間帯責任者が店長に報告し、程なくして店長降臨。
「自分たちは拾っただけであり、店側の落ち度だろ!」といった具合に揉めるが、面倒な事が嫌いな店長は「そういうズルする奴嫌い」的に全員まとめて出入り禁止処分。
こういった経緯のようでした。
ちなみに、この店長さんは、事あるごとに厳しい裁定を下すことで恐れられており、例えば朝一の並び時や狙い台の取り合い等の揉め事でも、お客さん同士で口論になったりスタッフに食って掛かってくる輩に対しては
「あー、お前とお前、あとお前も、出入り禁止な!二度と来るなよ!」
といった感じで吠えている場面に出くわすこともあったので、まれに早番勤務した時などは、そういったやり取りを見ていて「パチ屋って凄いところだなー」と思っていました。
また、あれはめぐみ工務店だったでしょうか、何の台だったかは忘れてしまいましたが、遊技機を殴打したりスタッフに玉を投げつけたりしていたチンピラ風の不良客に対して一直線に突進して行き椅子の背もたれ部分をケンカキック→勢い良く回転した椅子に振り落とされる格好で転落した不良客を掴んで引き摺っていき、外に放り投げるという活躍もありました。
※私はホールの隅っこでビビりながら観察しておりました。
・・・こんな感じで、無法状態というかカオスな状況にあっては権力者による秩序がもたらされるという観点で、現場に居るスタッフはこの店長さんのお陰で色々と助かっていたのを覚えています。
まあ、乱暴そうに見えて面倒見は良い人らしく、今回ご紹介したミスも含めてダメダメな社員だった(ように私には見えました)Sさんに対してもポジションを与えて設定絡みの業務を任せていた事を考えても、それはダサダサでも悪臭を放っていても、いつ何時でも与えられた業務を遂行しようとするSさんの責任感の強さを買っての事だったのかと思います。
Sさんが店に寝泊まりしてまで仕込んでいたモーニング。
どのお店にも開店前には並びが発生し、朝一ダッシュで台を確保して即当たりをGETしたお客さんの嬉しそうな顔・・・
今となっては、何とも懐かしく思い出されます。
今回は、これくらいにしておこうかと思います。
次回は、「DA PUMP大好き奈美ちゃん」 を予定しています。
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奇数or偶数には笑ってしまいました
それにしても昔のホールってのは色々とすごい空間だったんですね
シュウジ さん
Sさんの面白エピソードに関しては、あまりに具体的過ぎて書けない珍ネタもまだまだあり、むず痒い気持ちです。
札に関しては、他にも
・「爆裂予想台」=店長さんや社員がその日の気分で適当に挿すだけ
・「!」=熱い?
・「!」2枚挿し=もっと熱い?
・「!」3枚挿し=熱い
・「!」4枚挿し=更に熱い
・「!」5枚挿し=本格的に熱い
・「!」6枚挿し=設定6確定
こんなものがあり、我々アルバイト間の噂では「!」6枚挿しは設定6だが、それ以下は出方や遊技客の様子を見ながら時間帯責任者クラスの社員が賑やかし目的で適当に使用していただけのようです。
Sさん、生きていればそろそろ定年退職の頃かと思います。
「再会したい」、というタイトルではありますが、こうして記事にしてみるともうすでにお腹一杯というか、別にまた会わなくてもいいや、そんな気がしてきました・・・
本日も楽しく拝読させて頂いております。
私も奇数or偶数札のくだりからの楽太郎画伯の名画には職場で吹き出しました。
マイクパフォーマンスは私もSさんと同じオーソドックスタイプを貫きました。
私なりに自己満足で収まってはいけない、顧客のリアクションを見ながらのマイクパフォーマンスを心がけました。今は亡き渋谷のB〇ステーションでハウスミュージックに合わせてひたすら『〇Bステーション絶好調』とラップ的に歌うマイクには辟易したものです。
設定漏えいは人為的ミスが重なると今でも起こりえますよね。明日は我が身の教訓として部下の方々に言って聞かせて差し上げてください。Sさんにお仕事を任せる度量を持ち合わせ、チンピラをブン投げる店長はかなり頼れる店長だったんだろうな、と思いを巡らせます…。
読者何某 さん
私が所属しているホール企業では10年以上前から既にマイクパフォーマンス文化は無くなっており、たまに他エリア探訪で小規模店舗などにお邪魔した際、いかにもパチ屋な感じの煽りマイクで大当りを祝福された際などは思わず口角が緩んでしまいます。
なにせ、「マジェスティックプリンスコーナーから、待ってましたのフィーバースタート!張り切ってどうぞ!」ですからね、これはもう、連チャンさせないわけにはいきませんが、なかなかどうして連チャンさせられないのが不徳の致すところです…
ちなみに、当時のアルバイト先には、
①「オネーチャン、当たって良かったね」「オトーサン、勝負はこれからだと思うよ」という”呼びかけ系”
②「こちらセクシーショットコーナー巡回中の●です、順調に出玉増加中、■さんの島はどうですか?」「いなかッパ大将で連チャンを確認!どうぞ! 」といったスタッフ同士で近況報告し合う”レポート系”
③「どうですか今日は、いけそうです?」と常連客に応答を求める”突撃取材系”
④「冒険島のお客様爆連中!G・O・O・D・L・U・C・Kグッドラック!僕も●ちゃんのジャングルを探検したい!S・E・X・S・H・I・T・A・I!」といった”どさくさエロ系”
こういった輩が居ました。
ああいう連中は、今一体どこでどんな暮らしをしていることやら。
昔の香ばしい同僚たちに思いを馳せます。
楽太郎さん、BOX(確か会社では弁当箱と言ってた)はいまだに使っていると思いますよ(^_^;)
製造過程で、リールの慣らしや作動確認の為に弁当箱をつないで回してましたよf(^_^)